リー・クアンユー氏を失ったのはシンガポール国民だけではない。世界もまた同時に、このカリスマ性かつ先見性に富んだシンガポール建国の父を失った。リー氏(91)は今年2月上旬に肺炎で入院し、昨日月曜未明に息を引き取った。彼が残したものは、発展した経済と規律ある未来志向の社会を持つ国だった。 ...
カテゴリ:インドネシア現地報道(論説)
スカルノとは誰か?-文豪プラムディヤが論じるインドネシア初代大統領の「功罪」(タイム誌1999年8月23日号)
スカルノは祖国をひとつにまとめ、独立へと導いた。国民を劣等感から解放し、彼らにインドネシア人としての誇りを植え付けた。これは350年に及ぶオランダの植民地支配と3年半の日本の占領を経た後に達成された事であり、決して取るに足らないものではない。1945年8月17日にスカルノが行なった事は、1776年7月4日にトーマス・ジェファーソンがアメリカ国民に対して行なった行為と何ら変わりはない。加えて、スカルノはこれほどまでに異なる民族、文化、宗教的背景を持つ国民を一滴の血も流すことなくまとめあげた現代アジア唯一の指導者だろう。彼が成し遂げたものを、その後を継いだスハルトが自らの新秩序体制を確立するために数十万人の国民の命を奪い、投獄したことと比較してみてほしい。 ...
【韓国】「受け入れ難い駐韓アメリカ大使への襲撃」-インドネシア・コンパス紙社説(2015年3月7日)
驚くべきニュースが舞い込んだ。マーク・リッパート駐米アメリカ大使が韓国の政治活動家である金基宗(キムギジョン)容疑者に刃物で切りつけられた。今回のリッパート大使に対する襲撃事件は受け入れ難い。これはとりわけ3月5日木曜日、リッパート大使が朝鮮半島統一をテーマとした会合に出席した際に襲撃されたためだ。親北朝鮮派の活動家として知られる金容疑者は事件の発生後、ただちに身柄を拘束された。 ...
【死刑問題】「インドネシア在外公館へのテロ、高まる脅威」-インドネシア・コンパス紙社説(2015年3月5日)
3月3日火曜日朝、オーストラリア・シドニーのインドネシア総領事館が見知らぬ人物に襲撃された。この人物は血のような赤色の液体が入った風船を数個、在シドニーインドネシア総領事館前の地面に投げつけた疑いがもたれている。インドネシア領事館はすぐにこの出来事を通報した。現地警察が直ちに包囲網を敷き、現場周辺の警備に当たった。デイリーテレグラフ紙によれば、ニューサウスウェルズ警察当局はその赤い血に似た液体は危険物ではないとしているという。監視カメラの映像から、ひとりの女性が複数の風船をインドネシア総領事館前の地面に置き、ひとつずつ踏み潰していったと判明した。それらの風船には血のような赤色の液体が入っていた。女性の行動はおよそ5分にわたって行われた。 ...
【死刑問題】「インドネシアは他国へ屈するべきなのか」-インドネシア・コンパス紙社説(2015年1月19日)
この題名-省略せずに書けば「インドネシアは他国へ屈するべきなのか」となる-は今回の社説を書くにあたって、あえて使用したものだ。この題名の選択はブラジルとオランダによる大使の召還を念頭に置いている。麻薬事件に関与した6人の死刑囚に刑が執行されると、両国は駐インドネシア大使を本国へ召還した。6人の中にはブラジル人のマルコ・モレイラおよびオランダ人のアン・キィム・スイという2人の死刑囚が含まれていた。ブラジルのジルマ・ルセフ大統領による大使召還の決定は、国内の要求や利益をにらんだものだろう。大統領は自国民がどこにようとも保護するという姿勢を打ち出した。ブラジルと同じく大使の召還を行なったオランダ政府も同様の姿勢を示している。 ...
「日本人人質事件と国家の対応」-インドネシア・コンパス紙社説(2015年2月5日)
湯川遥菜氏と後藤健二氏の2人の日本人がイラクおよびシリアにおけるイスラム国に人質とされ、最終的に殺害された。今回の事件によって多くの国々が認識したのは、自国民がISISもしくは他の武装集団による誘拐や人質事件の犠牲者となり得るという点だ。自国民が誘拐され、誘拐犯が巨額の身代金を要求してきた場合、関係する国はどのように対応するべきなのだろうか。 ...
「混迷するイスラム国人質事件」‐インドネシア・コンパス紙社説(2015年1月31日)
「イスラム国」による人質事件は日本政府だけではなく、ヨルダン政府をも巻き込んだことでさらに混迷を深めている。事件はISISによる二人の日本人、すなわちコントラクターの湯川遥菜氏とフリージャーナリストの後藤健二氏の誘拐に端を発している。ISIS側は日本政府に対し、2百億米ドル(2.5兆ルピア)の身代金を2015年1月23日までの期限に支払うよう要求した。日本政府は期限までにその要求を受け入れなかったため、ISISは湯川氏を殺害した。日本政府はISISによる湯川氏の殺害後も2.5兆ルピアの身代金を支払う姿勢は示していない。ISISはこうした状況を受け、人質の後藤健二氏を利用することで、ヨルダンで収監中の彼らの仲間であるサジダ・リシャウィ氏を釈放するようヨルダン政府に圧力をかけている。 ...
【「イスラム国」日本人人質事件】「日本にとっての困難な選択」‐インドネシア・コンパス紙社説(2015年1月28日)
「イスラム国」(※注)の要求を受け入れるべきか。日本の安倍晋三首相は難しい選択を迫られている。仮にISISが求める2百億米ドル(2.5兆ルピア)の身代金を支払わないとすれば、それは安倍首相がISISに人質とされた日本人フリージャーナリストの後藤健二氏を見殺しにしたことを意味する。なぜなら、ISISは日本政府に対して身代金を支払うよう要求しているためだ。要求を拒んだ場合、後藤健二氏を殺害すると脅迫している。ISISが1月23日金曜日に後藤健二氏とともに人質となっていたもう一人の日本人である湯川遥菜氏を殺害したことで、安倍首相に対する圧力が日増しに強まっている。湯川氏が殺害されたのは、期限とされた2013年1月23日までに日本政府が身代金を支払わなかったためだ。 ...
「阪神・淡路大震災から20年‐災害から学び続ける日本」‐インドネシア・コンパス紙(2015年1月18日)
2015年1月18日付けコンパス紙1面(および15面)「神戸地震から20年-災害から学び続ける日本(20 TAHUN GEMPA KOBE: Jepang Terus Belajar dari Bencana)」の翻訳です。神戸市で行われた追悼行事や関係者の取材などの現地取材を中心に神戸発の記事として掲載されています。 ...
「シャルリー・エブドの悲劇」-インドネシア・コンパス紙社説(2015年1月9日)
非人道的犯罪がなぜこれほどまでに安易かつ身勝手に、罪の意識もなく行われ得るのだろうか。この冒頭で私たちが提示した問いかけは、フランス・パリの風刺週刊紙「シャルリー・エブド」の編集部が昨日、武装した集団に襲撃された事件に関連したものだ。この3人が行なった襲撃によって、12人が死亡、重体を含めて11人が負傷した。 ...