スウェタ・カルティカ(Sweta Kartika)。現在のインドネシアを代表する人気漫画家のひとり。2011年のデビュー以来、恋愛とアクションという2つのジャンルを中心に数多くの作品を世に送り出してきました。

代表作は「Wanara」(2011年)、「Grey & Jingga: The Twilight」(2014年)、「H2O: Reborn」(2016年)など。インドネシア大学生の恋愛を描いた「Grey & Jingga」は現在でも版を重ねるロングセラー。2015年にはコミック・カタパルトから日本語訳が電子書籍で出版されています(試し読み)。また、「H2O: Reborn」は今年8月にジャカルタで開催されたポップカルチャーイベント、ポップコン・アジアで最優秀漫画賞を受賞しています。

そんなスウェタ・カルティカの新連載が一挙に2作品(!)、インドネシアの漫画誌「re:ON Comics」最新号で始まりました。インドネシア発のスーパーヒーロー漫画「Nusa V(ヌサ・ファイブ)」と大人気恋愛漫画「Grey & Jingga」の続編という全く異なるジャンルの同時連載。読者の反応を含めて、今後の展開が楽しみです。

「re:ON」誌最新号では上記の新連載だけではなく、作者であるスウェタ・カルティカの巻頭インタビューも掲載されました。全文を翻訳してみましたので、以下にご紹介します。

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名前:スウェタ・カルティカ(Sweta Kartika)
生年月日:1986年4月14日
趣味:映画鑑賞
好きなこと:旅行
嫌いなこと:睡眠を邪魔されること
作品(出版社、出版年)一覧:The Dreamcatchers (Koloni, 2011), Wanara (Makko, 2011 / Kosmik, 2015), Grey & Jingga: The Twilight (Koloni, 2014) , Nusantaranger (2014), Pusaka Dewa (Ragasukma, 2015), Kalau Monyet Jatuh Cinta (Mizan, 2015), Piraku x Piraku (LINE webtoon, 2015), Grey & Jingga: Days of the Violet (2015), H2O: Reborn (Kolam Komik, 2016), Spalko (re:ON, 2016), Panca - Sang Perkasa (Garda Comics, 2017), Grey & Jingga: Purple Sunday (re:ON 2017), NusaV (re:ON, 2017). ※単行本以外に同人誌・ウェブ漫画・連作中の作品も含む。

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こんにちは。最近の調子はどうですか?
こんにちは。絶好調ですよ。今は漫画、漫画の毎日です。進行中の作品をいくつも抱えていますので。

漫画を描き始めたきっかけは?
漫画自体は子供の頃から描いていました。もっとも当時は学校近くの本屋で買ったコミックを真似して描いてみるといった程度ですし、漫画もノートに描いていました。プロとして漫画界に足を踏み入れたのは2011年からです。締め切りや漫画の作法といったものを知ったのも、この時が初めてです。

漫画を描き始めてから、何か壁にぶつかったことや悩んだりしたことは?それをどのように克服しましたか?
最近の悩みといえば、やはり作品の製作時間についてです。僕の場合は同時に複数の連載を持つことが多いのですが、先に仕上げるべき作品が終わらなければ、時には他の作品の締め切りをずらさなければいけないこともあります。解決策としては、時間をうまく使うこととと、制作にとりかかる前にストーリーのコンセプトを練り上げるということでしょうね。とはいえ、どうしても締め切りに間に合わないということも少なからずあって、作品の公開が遅れてしまう場合もあります。絶対に落とせない連載もいくつかありますが、それを抜きにしても、たいていの場合は睡眠時間を犠牲にせざるを得ないです。

1か月で仕上げられる作品数は?
少なくとも毎月2作品は並行して仕上げています。ページ数にすれば、30日で大体50から60ページといったところでしょうか。

締め切りを守るコツは?家族との時間をどのように確保していますか?
僕はフリーランスなので作業自体はどこでもできます。ほとんどの作品をアナログで描いていますので。家族団らんの最中に漫画を描いたり、妻とカフェでくつろぎながら漫画を描くこともよくあります。これが僕らにとっての日常なんです。執筆に専念するために特定の状況を求める漫画家もいますが、僕はそういったものを必要としません。電車の中であっても漫画を描くことができます。漫画を描く上で時と場所を選ばない。それが素早く仕上げられるコツでしょうか。そして、これが最も重要なことだと思いますが、今までに手掛けた作品の中には製作チームとアシスタントの協力を得たものもいくつかあります。

自身の作画スタイルに最も影響を与えた漫画家は?
これまでに読んできた漫画作品から多くの影響を受けています。例えば、「ドナルドダック」や「ドラゴンボール」、「Tiger Wong」などの中国コミック、西山優里子の「ハーレムビート」、「名探偵コナン」、その他には井上雄彦、浦沢直樹、沙村広明といった漫画家の作品です。インドネシアの漫画家であれば、Ganes THの作画スタイルがもっとも自分の好みに合っています。

漫画家として活動していく上でモチベーションとなるものは?
僕は物語の創作と絵を描くことを趣味としていますが、漫画だけなんです。この2つの趣味を両立させることができるのは。頭の中では多くのインスピレーションが日々湧き出してきます。要するに、作品として仕上げていないアイデアが山のようにある訳です。こうしたアイデアの存在が漫画の執筆を続ける上でのモチベーションとなっています。 

作画技術の向上とストーリー作りのコツは?
作画技術の向上については練習あるのみです。まずは時間を決めて練習を習慣づけること。そして、作画に関する課題の設定です。必要とされる作画スキルや自分の弱点など、各々の能力に合わせて課題を設定してみて下さい。例えば、背景が上手く描けないとすれば、背景の作画に焦点を絞って練習を始めてみるといいでしょう。ストーリー作りに関しては、僕の場合はなるべく多くの小説を読んだり、映画を観たりすることで感覚を養っています。

re:ONコミックスで連載を開始したきっかけは?
re:ONで連載を始めたのは、この出版社の知的財産(IP)の扱い方に興味を惹かれたからです。re:ONでは数多くの漫画家が大きく成長していく姿を目にしてきましたし、自分の漫画のアイデアを成長させる上でも良いホームグランドになると考えました。re:ONでの連載を決めたのはこうした理由からです。

「Spalko」ヒロインTeslaのコスプレを披露するJeanice Angさん。

re:ONコミックスで連載して何か面白い経験はありましたか?
re:ONで初めて、自分の作品の公式コスプレイヤーが誕生しました。Jeanice Angが扮する「Spalko」のヒロイン、Teslaというキャラクターです。

これまでに漫画家をやめたいと思ったことは?
一度もありません。逆に、プロとしてのキャリアを歩むうえで、日を重ねるごとに自分の仕事に確信が生まれています。

「Spalko」が誕生したきっかけは?
「Spalko」はre:ON読者が最も好むジャンルについて、Andik Prayogoと話し合った際に着想を得ました。当時、読者に人気があったジャンルはロマンスとアクションでした。そこで、この2つのジャンルを組み合わせたストーリーを作ってみようと思い立った訳です。結果として誕生した作品が「Spalko」です。


新連載「Grey & Jingga: Purple Sunday」について、過去シリーズとの違いは?
これまではコミック・ストリップ形式で、(毎回1ページの)4から5コマの単純なコマ割りとロマンティックな引用で締めくくっていました。一方で、今回の「Purple Sunday」シリーズでは一般的な連載作品の形式を採用しています。



新連載「Nusa V」について教えてください?
「Nusa V」は僕らが過去に手掛けたウェブ漫画「Nusantaranger」の発展形といえる作品で、地球の守護者の生まれ変わりである5人の若者たちと悪の化身クラナ率いるサンデカラたちとの戦いを描いています。編集にあたっては小学館アジアの協力を得ました。「Nusa V」はインドネシアではre:ONコミックスで連載が開始されます。その後は小学館アジアを通じて世界市場への進出を目指します。


これまでに自身が手掛けた作品の中で、もっとも挑戦的なものは?
最も挑戦的な作品といえるのは「H2O:Reborn」です。理由はいくつかありますが、まずはSF、アクション、ドラマというジャンルを融合させた作品であるということ、そして締め切りが月刊連載のペースだったということです。作中のキャラクターや世界観もこの作品を非常に挑戦的なものにさせた要因です。ロボットの世界を舞台としたことで、作画においても複雑さが求められました。また、この作品には耳慣れない用語や難解なストーリーコンセプトが数多く出てきますが、こうした設定に馴染みがない読者にも楽しんでもらえるように、できる限りシンプルな言葉で表現するよう心掛けました。


漫画家になる上で欠かせないものとは?
しっかりとしたストーリー作りと作画技術はもちろんですが、僕が思うに、漫画家には自己管理や粘り強さといった面での大人らしさも必要とされます。また、忘れてはいけないのが、漫画を描いて生計を立てるということです。漫画を描くだけではなく、自分の作品を「売り込む」ということにも長けていなければなりません。最後に、漫画家には誠実な姿勢というものが求められます。漫画家としての成功は自分ひとりの力だけでは決して達成できません。多くの人の助けや読者との良好なコミュニケーションが必要とされる訳ですが、これは個人としての誠実さが伴って初めて得られるものです。

漫画家を目指すre:ONコミックスの読者にメッセージをお願いします。
漫画家を目指す読者の皆さんへ。まずは皆さんが憧れる漫画家たちに目を向けてみましょう。彼らが漫画界でいかに苦心して作品を生み出してきたのか。そのキャリアを辿ってみて下さい。そこからはきっと、プロセスの大切さや決して諦めない強い気持ちといったものを学ぶことができるはずです。