日本の観光産業、物価高イメージとの戦い
コンパス電子版、2015年3月14日(土)
(同じ記事は3月13日付けコンパス紙の紙面にも掲載)

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写真:2014年12月5日金曜日、福岡空港の待合室に向かう乗客たち。福岡や九州での観光を終え、帰国する外国人観光客が大半を占める

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5年後に開催される東京オリンピックに合わせて、日本政府は2020年までに訪日外国人観光客数を現在の1千万人から最低でも2千万人に引き上げると発表した。観光客の増加を目指した様々な取り組みが行われる中で、物価が高い国というイメージは今も日本につきまとう。

2014年12月中旬から2015年1月上旬にかけて、コンパス紙は(日本人を除く)複数の外国人に取材を行ない、日本に関する印象を聞いた。その中で最も多く言及されたのが物価の高さについてだった。ホテル、交通機関、食事、その他の必需品に関しても、日本はあらゆるものが高いという。

しかし、これまでの来日回数について聞いてみたところ、彼らの中には今までに一度も日本へ行った事のない者や最近初めて行ったばかりだという者もいた。日本の物価が高いという情報は人づてに聞いたものだという。

「いつかは日本へ行ってみたいです。ただ、友人たちからは日本の物価は高いと聞いています。機会があれば行きたいのですが、なかなか決断できずにいます」とジャカルタの多国籍企業に勤めるレイナルド(35)は語った。

現状では、日本は物価が高いというイメージは非常に根強いものであるばかりか、おそらくヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、アフリカ諸国にも同様の認識が広がっている。また、こうしたイメージが原因で多くの外国人が日本への観光を敬遠しているとも考えられる。

しかし、現在福岡で働くベルギー人のブルノ・デルコンはこうした見方を直ちに否定した。日本の物価高は1980年代に起こったものであるという。当時のレートは1ドル76円だった。

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写真:北海道・網走刑務所博物館敷地内の雪道

両通貨の交換レートにさほど差がないことが影響して、日本ではあらゆるものが高くなった。訪日外国人も日本の物価の高さを感じているため、日本は観光の主要な目的地から外れることになる。こうした状況は長い間続いてきた。日本を観光するのは十分な資金を持った外国人だけだった。結果として、日本は物価が高い国であるという否定的なイメージが生じた。

一変する状況
しかし、この15年で日本の状況は一変した。不況によって、あらゆるものの値段が安くなった。現状レートは1ドル115円から120円で推移している。シンガポールドルは逆に、ドルに対して強くなっている。現在は1ドルが95‐97シンガポールドルとなっている。

したがって、現在の日本の物価はシンガポール、ヨーロッパ、香港よりも安くなっている。さらに、例えばベルギーでは21パーセントになる消費税が、日本ではわずかに8パーセントであることも物価安を支えている。

「率直に言って、日本での生活および観光は今、最も興味深いものです。安い価格で質の高い食事に舌鼓を打ち、どこへでも出かけることができます。西ヨーロッパと比べれば、日本の滞在で使う費用はわずかに4分の1に過ぎません」とブルノは語った。

それでもなお、日本は物価の高い国という否定的なイメージが外国人観光客獲得の足かせになってきた感がある。日本の持つあらゆる長所をもってしても、外国人観光客をひきつける要因となることはまれだった。逆に、日本人が海外へ出かけることが多くなった。日本政府観光局(JNTO)によれば、2013年に中国を訪れた日本人は280万人に達するが、逆に日本を訪れた中国人はわずかに130万人にすぎない。

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写真:2014年2月6日木曜日、入園者の前で行進する北海道・旭山動物園のペンギンたち。

さらに、世界観光機関(WTO)によれば、2013年に中国を訪問した外国人観光客は5千570万人であり、前年比3.5パーセント増となった。中国は外国人観光客数で世界第4位を占める。また、タイでも2千650万人の外国人観光客が訪れており、これは2012年から18.5パーセントの増加となっている。

同様に、インドネシアを観光する日本人は50万人に達するが、日本を訪問するインドネシア人はおよそ15万人にとどまる。こうした不均衡は世界各国、とりわけアジア諸国で起こっている。つまり、日本は物価の高い国であるとの否定的なイメージを今もなお拭い去れずにいるのだ。

高いものばかりではない

JNTOジャカルタ事務所所長の石崎雄久は、こうした否定的なイメージはあまりに誇張されたものだと話す。その理由として、日本にも高い質を伴った安価なホテルや品物が数多くある点を挙げた。例えば、浅草ホテル和草は、浅草駅、東京スカイツリー、浅草寺から徒歩15分の場所にあるが、宿泊料金は1泊24万8千ルピアから49万5千ルピアとなっている。

他にも、一泊40万6千ルピアの部屋を備えたバックパッカー専用ホテルもある。こうしたホテルは安いだけではなく、清潔かつケーブルテレビや無料Wi-Fi設備も完備されている。「こうしたホテルは東京だけではなく、日本全国の多くの都市に広がっています」と石崎は語った。

同様に、安価だが高品質な商品が日本では数多く販売されている。例えば、東京ソラマチは東京スカイツリーと一体化したショッピングストリートとなっている。浅草の仲見世通りは浅草寺に通じる通りから小路まで土産屋が軒を連ねる。この場所では手ごろな価格で土産物を購入できる。

また、日本のほぼ全ての都市に低価格で日本食を提供しているレストランがある。留意すべきは観光客はインターネットやそうした需要に対応できる関係団体を通じて情報を得る必要があるという点だ。

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写真:東京・浅草寺の門

さらに、日本は間違いなく犯罪率が最も低い国のひとつに数えられる。一人でも複数でも、いつどこへ出かけようとも心配する必要はない。公共の場所に荷物を置き忘れたとしても、盗まれることなく当たり前のようにその場に残されている。置き忘れに誰かが気が付けば、その荷物は持ち主のもとへ戻ってくることだろう。

他にも、日本の交通機関は非常に効率がよく(空港には地下鉄が接続し、鉄道会社も市営バス会社と連携している)、清潔で、時間通りに運行される。道に迷う心配もする必要はない。英語を話す日本人はそれほど多くはないが、彼らは求められれば必ず行き先を教えてくれる。

「したがって、日本は物価が高いため、観光客がショッピングにお金を使ったり、様々な場所を巡ったりすることは難しいというのは、完全に正しいという訳ではありません。その証拠に安価なものもありますし、日本滞在中の安全や快適さも保障されています」と九州経済連合会会長の麻生泰は語った。

Kompas.com, Sabtu, 14 Maret 2015 

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