インドネシア人にとって、日本の観光地といえば東京と大阪なのだろうか。こんな事を考えるようになったのは、最近読んだ日本観光に関するインドネシアメディアの報道がきっかけだった。

(1) 日本へ旅行するインドネシア人観光客はこの二年間、右肩上がりで増えている。中でもインドネシア人のお気に入りが東京と大阪だ。「日本、特に東京と大阪は非常に有名です」とインドネシアの旅行代理店責任者。("Bosan" Tokyo? Bisa Pilih Pelesir ke Hokkaido

(2) 2015年3月上旬、日本政府観光局(JNTO)は「ジャパン・トラベル・フェア」をジャカルタで開催。「東京と大阪が観光での一番の目的地となっていますが、私たちはそれ以外にも他の小さな都市を宣伝していきます」とJNTOの担当者。(Sebelum Berlibur ke Jepang, Kunjungi Japan Travel Fair 2015

上記の今年2月と3月の記事で、インドネシア人にとって日本の観光地といえば東京と大阪であると、日・イ両国の担当者が口をそろえる。雪国(+田舎)出身でこれまで関西圏とはほぼ無縁の人生を歩んできた僕にとって、外国人観光客が喜ぶのは京都のようなまさに「ニッポン」的な場所だというカッペ丸出しの思い込みがあったが、どうもそうではないらしい。

とはいえ、関西の実情をほとんど知らない僕には、インドネシア人にとって日本の観光地といえば(東京と)大阪であると言われても、正直ピンとこないものはピンとこない。大事なのはデータだろうという訳で、試しに検索をかけてみたら、思いのほかあっさりとお目当ての資料が見つかった。

2
1

JNTOの資料によれば、2013年度のインドネシア訪日旅行者数は10万1460人(2014年はおよそ16万人)。そして、都道府県別訪問率の項目をみると、1位東京(62.8%)、2位大阪府(35.4%)、京都は3位(22.2%)となっていた。

なんと大阪が京都を10ポイント以上引き離しているではないか。冒頭で紹介した日・イの観光担当者の発言も、おそらくはこうしたデータに基づいたものなのだろう。ここまではっきりとした傾向が出ているなら「ピンとこない」なんて言ってる場合じゃないなあ...と思っていたら、上記データの注釈部分にちょっと気になる文言を発見した。以下に該当部分を引用してみよう。

「注:上記の数値はすべて観光庁『訪日外国人消費動向調査』の平成26年1-3月期、4-6月期、7-9月期を単純合算したもの。インドネシアは、平成26年より『訪日外国人消費動向調査』の調査対象国となったため、平成26年のデータを使用した。また、インドネシア人の回答数のうち、観光客の回答数が少ないため、インドネシアについては観光を含む回答者総数のデータを用いる」

「観光客の回答数が少ない」...これは一体どう解釈したものか。単純に考えるならビジネスや諸々の手続き(大阪にはインドネシア総領事館がある)、もしくはインドネシアからの直通便で関西国際空港に降り立った訪問者がそのままカウントされているだけという可能性もあるかもしれない。いずれにしても、上記の「都道府県別訪問率」はこの注釈をきちんと念頭に置いた上で理解および利用するべきだといえるだろう。

という訳で、インドネシア人にとって日本の観光地といえば東京と大阪である。この認識自体は否定しないが、その根拠となる(と考えられる)調査の結果には多少の疑問がない訳でもないという所が、現時点での結論というか落としどころなのかな、とか何とか考えている。個人的にはこの点に関する、今後のより詳細な調査を期待したい。

ところで、最近気になっているのは、訪日インドネシア人観光客のうちイスラム教徒が占める割合について。日本に来るインドネシア人の大半が華人というツイートを見かけたこともあるが、実際はどうなのだろうか。根拠となる統計等をご存知であればぜひ教えて頂きたい。よろしくお願いします。