r-min

2015年1月31日付けコンパス紙社説「混迷するイスラム国人質事件(Soal Sandera NIIS Semakin Rumit)」の翻訳です。「イスラム国」側による新たな要求や期限の設定を念頭に、一国の政府がどのような対応をとるべきかを論じています。

社説:混迷するイスラム国人質事件
コンパス(2015年1月31日土曜日)

「イスラム国」(ISIS)【訳注】による人質事件は日本政府だけではなく、ヨルダン政府をも巻き込んだことでさらに混迷を深めている。

【訳注】原文は「Negara Islam di Irak dan Suriah (NIIS)」。翻訳では便宜上、英語表記の「ISIS」を使用した。

事件はISISによる二人の日本人、すなわちコントラクターの湯川遥菜氏とフリージャーナリストの後藤健二氏の誘拐に端を発している。ISIS側は日本政府に対し、2百億米ドル(2.5兆ルピア)の身代金を2015年1月23日までの期限に支払うよう要求した。日本政府は期限までにその要求を受け入れなかったため、ISISは湯川氏を殺害した。

日本政府はISISによる湯川氏の殺害後も2.5兆ルピアの身代金を支払う姿勢は示していない。ISISはこうした状況を受け、人質の後藤健二氏を利用することで、ヨルダンで収監中の彼らの仲間であるサジダ・リシャウィ氏を釈放するようヨルダン政府に圧力をかけている。

ISISはリシャウィ氏が現地時間の1月28日水曜日午後4時までの釈放されなかった場合、彼らが拘束しているヨルダン人パイロットのムアーズ・カサースベ氏を殺害すると、後藤氏の声とされる音声メッセージを通じて脅迫を行なった。ISISの人質となった後藤氏の母が日本政府に対して息子の釈放に向けて最善を尽くすよう求めると、日本政府に対する大きな圧力が生まれた。

日本政府に対する圧力は、ヨルダン政府がISISの要求に応じる姿勢を示したことで弱まった。しかし、ヨルダン政府はカサースベ氏が生存しているとの確証を求めている。

事態は膠着し、期限とされていた水曜日の午後4時が過ぎた。ISIS側はその後、1月29日木曜日、モスル(イラク)時間の日没を新たな期限とした。ヨルダン政府は引き続きカサースベ氏と引き換えにリシャウィ氏を釈放する姿勢を示したが、新たに提示された期限もすでに過ぎている。

一方で、ヨルダン側が最終的にリシャウィ氏を釈放しないと決定した場合、カサースベおよび後藤氏のその後はどうなるのか。また、リシャウィ氏がカサースベシ氏と引き換えに釈放された場合、後藤氏は同じくISISから解放されるのか。私たちはまだ、現在も続くISISによる人質事件の終結を待たなければならない。

現在のようにあらゆるものがオープンとなる時代において、断固たる決断は一国の政府にとって容易に下せるものではない。その判断が人質とされた自国民の生命に関わるとすればなおさらだろう。こうした点は、国民、とりわけ人質の家族が自らの存在を考慮に入れるよう求めていることにも起因している。決断を下す前に考慮するべき要因は数多く存在する。政府はもはやこうした事態を白か黒かで判断する事はできない。

Kompas, Sabtu, 31 Januari 2015
Soal Sandera NIIS Semakin Rumit

【関連記事】
【「イスラム国」人質事件】「日本にとっての困難な選択」‐コンパス紙社説(2015年1月28日)