※2015年2月5日付けコンパス紙社説より。本文の「イラクとシリアにおけるイスラム国」という表現は記事で使用されたインドネシア語の 「Negara Islam di Irak dan Suriah」(略称はNIIS)をそのまま翻訳したもの。略称の「NIIS」は訳文では便宜上、英語の「ISIS」とした。

社説:日本人人質事件と国家の対応
コンパス(2015年2月5日木曜日)

湯川遥菜氏と後藤健二氏の2人の日本人がイラクおよびシリアにおけるイスラム国に人質とされ、最終的に殺害された。

今回の事件によって多くの国々が認識したのは、自国民がISISもしくは他の武装集団による誘拐や人質事件の犠牲者となり得るという点だ。自国民が誘拐され、誘拐犯が巨額の身代金を要求してきた場合、関係する国はどのように対応するべきなのだろうか。

こうした経験は日本だけがしている訳ではない。他の多くの国々も過去に同様の経験をしてきた。アメリカ合衆国はそうした国の一つに含まれる。アメリカの場合は、テロリストの要求に屈服する事はないと言明しているため、状況はより容易なものとなる。

自国民が誘拐された場合、アメリカは彼らを救出するために、軍事力による救助作戦を含めた自身が行い得るあらゆる可能性を全力で試みるだろう。しかし、誘拐犯が要求する身代金の支払いに関してはその限りではない。最終的にもはや打つべき手段がなくなった場合、自国民の命は誘拐犯の手に委ねられる。

アメリカはこれまでに誘拐犯が要求する身代金の支払いに応じてこなかった。その理由としては、第一に、身代金を支払った場合に人質が解放される保証がない。第二に、アメリカが巨額な身代金を過激派組織に支払う正当な理由が見当たらない、という点が挙げられる。

身代金の支払いが行なわれた場合、アメリカが敵対する過激派組織に資金援助をしたも同然と言える。また、支払いに応じたとすれば、その過激派組織やその他の過激派組織を問わず、それが前例となるとの懸念もある。

しかし、現在のような情報公開の時代において、ケースごとに判断することなく、身代金を支払わないとの決定を下すことは当然ながら非常に受け入れがたいものだ。ましてや、今回の日本人誘拐事件の場合、人質となった日本人の母親も参加して、自らの息子が解放されるよう働きかけていた。日本のような政府にとって、アメリカ型の白黒をはっきりつける対応をとることは全く容易な事ではない。

逆に、今回の日本人人質事件から私たちが学んだのは、過激派組織を信用してはならないということだ。日本政府が期限までに身代金を支払わなかったことで湯川遥菜氏は殺害された。しかし、後藤健二氏は当初、イラク人囚人とISISの人質となったヨルダン人パイロットの交換を行うよう日本政府がヨルダンを説得するために利用されていたが、最終的に交渉の最中に殺害された。そればかりか、その数日後にはヨルダン人パイロットも殺害された。

Kompas, Kamis, 5 Februari 2015
Tajuk Rencana: Sandera Jepang dan Sikap Negara


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