※2015年2月3日付けコンパス紙国際面より。本文の「イラクとシリアにおけるイスラム国」という表現は記事で使用されたインドネシア語の「Negara Islam di Irak dan Suriah」(略称はNIIS)をそのまま翻訳したもの。略称の「NIIS」は訳文では便宜上、英語の「ISIS」とした。

問われる安倍首相の対応
コンパス(2015年2月3日)

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写真:2月2日月曜日、イラクとシリアにおけるイスラム国(ISIS)が日本人記者の後藤健二氏を殺害したとの表明から一夜明け、東京で衆議院予算委員会に出席した日本の安倍晋三首相。テロに対抗する唯一の方法は国際社会と協調し、日本人救出のメカニズムを作ることだと安倍首相は語った。

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東京、火曜日-イラクとシリアにおけるイスラム国(ISIS)の人質となった日本人2名の救出に失敗したことをきっかけに、国際的な危機に対処する上での日本の能力に対して懐疑的な見方が広がっている。安倍晋三首相は2月2日火曜日、海外で自国民を救出するために軍隊を派遣する可能性についての議論があるべきとの見方を示した。

昨日月曜日、安倍首相は議会の委員会において、民間軍事会社コントラクター・湯川遥菜氏と戦場ジャーナリスト・後藤健二という2人の日本人の死亡で終わりを迎えた人質事件の対応をめぐって質問を浴びせられた。彼らは日本が仲介者を通じた救助交渉に失敗した後にNIIS兵士による処刑の犠牲となった。

ISISによる2人の日本人の処刑は日本にとっての警鐘となったと複数のアナリストは指摘する。日本は公式には長きにわたって中東紛争への関与を避けてきた平和国家だった。

ISISによる人質事件の間に見せた反応や対応によって、日本は中東地域における外交能力の弱さをさらけ出した。

「日本政府の情報取集能力の欠如が状況への対応を困難にしました」と拓殖大学の川上高司教授(安全保障)は語った。「これは警鐘です。こうした事態を経験したからには、日本は国内外での諜報活動能力を向上させていくべきです」。

イラクやシリアの多くの地域を支配下に収めるISISによる人質事件に直面した時、日本政府の交渉窓口は乏しく、中東情勢に関する知識も最小限のものしかなかった。

安倍首相はほぼ全面的に相手国のヨルダンに頼っていたように見える。しかし、実際には同じ時、ヨルダンはISISの人質となったヨルダン人空軍パイロットの釈放に向けた取り組みに注力せざるを得ない状況にあった。

安倍首相の弁明

議会の委員会で安倍首相には人質事件の対応をめぐる様々な質問が浴びせられた。一部の議員が問いただしたのは、安倍首相は先月1月17日、エジプト・カイロ訪問時の演説においてより慎重を期して、ISISを名指しする事は避けるべきだったのではないかという点だ。

ISISへの言及は、ISISと敵対する国々への2百億米ドル(2.5兆ルピア)の非軍事援助と関連したものであったが、こうした対応にISISが反応し、結果的に湯川および後藤両氏の処刑が行われたとされる。

安倍首相はこうした指摘に対し、カイロでの表明はテロリストと戦う上での強い決意を示したものだと説明した。首相はカイロで援助を表明した時に人質の件を認識していたと認めた。

「国際社会は中東の平和と安定に向けて動いている。それは訪問における最も相応しい目的であると考える。だからこそ、私はあの場で世界に向けてメッセージを発信しなければならなかった」と安倍首相は話した。

「自らの責任を果たすために日本の貢献を公表することは、テロとの戦いやその拡大を防ぐ上での国際社会の取り組みに寄与するだろう」と安倍首相は語った。

安倍首相はテロリズムと戦い、自国民を守るという政府の強い決意を強調した。「日本国民の安全を守るのは政府の責任であり、私はその最高責任者である」と安倍首相は述べた。

法改正

ISISによる湯川氏と後藤氏の殺害を受けて、日本政府では自国軍隊が海外での救援活動を行うための法改正の可能性を検討する動きが見られるようになった。

安倍政権が今後、軍隊の海外派遣を禁止を撤回すれば、それは日本にとって第二次世界大戦の敗戦以降では最大となる軍事政策の変更となる。

「国民を守るために必要な法整備がポイントとなる。今回の事件により、この議論はより重要になってくると思う」と小池百合子元防衛大臣は述べた。

しかし、日本のある防衛省高官は法律が改正されたとしても、それだけではまだ需要に応えたことにはならないと話す。日本は海外での軍事作戦を支援するための軍事力や高度な情報ネットワークを保有していないためだ。

Kompas, 3 Februari 2015
Langkah Abe Dipertanyakan