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【写真】イスラム国による邦人殺害について記者の質問に答える安倍晋三首相=首相官邸で2015年1月25日午前0時半

2015年1月28日付けコンパス紙社説「日本にとっての困難な選択(Pilihan Sulit bagi Jepang)」の翻訳です。「イスラム国」による日本人人質事件に関して、日本政府は身代金を支払うべきか否かを論じています。

社説:日本にとっての困難な選択
コンパス(2015年1月28日)

「イスラム国」(※訳注)の要求を受け入れるべきか。日本の安倍晋三首相は難しい選択を迫られている。

<※訳注:原文表記は「Negara Islam di Irak dan Suriah」(インドネシア語の略称は「NIIS」)。なお、以下の訳文では便宜上、「イスラム国」の略称として英語表記の「ISIS」を使用した>

仮にISISが求める2百億米ドル(2.5兆ルピア)の身代金を支払わないとすれば、それは安倍首相がISISに人質とされた日本人フリージャーナリストの後藤健二氏を見殺しにしたことを意味する。

なぜなら、ISISは日本政府に対して身代金を支払うよう要求しているためだ。要求を拒んだ場合、後藤健二氏を殺害すると脅迫している。ISISが1月23日金曜日に後藤健二氏とともに人質となっていたもう一人の日本人である湯川遥菜氏を殺害したことで、安倍首相に対する圧力が日増しに強まっている。湯川氏が殺害されたのは、期限とされた2013年1月23日までに日本政府が身代金を支払わなかったためだ。

当初は湯川氏の殺害に関する動画が偽物であるとの疑いもあったようだが、その後、動画は本物であることが証明された。それだけではなく、ISISはアルバヤン(Al-Bayan)ラジオの放送を通じて、「ISISは警告通り、期限後に日本人の人質である湯川遥菜を処刑した」との声明を発表した。

ISISはまた、彼らの仲間である、ヨルダンで収監中のサジダ・リシャウィ氏の釈放も要求している。リシャウィ氏は2006年9月、その前年にヨルダンの首都アンマンで60人の犠牲者を出した3件の爆弾爆発事件に関与したとして、死刑判決を受けた人物だ。

湯川氏の殺害という報道が確実なものとなると、日本では怒りの声が上がった。加えて、安倍首相も日本のテレビ局であるNHKのインタビューに応じ、「このようなテロ行為は言語道断であり、許しがたい暴挙だ。強い憤りを覚える」と語った。しかし、安倍首相はこれまで同様、後藤健二氏に危害が加えられることなく、早急に解放されるよう求めていくとした。

日本はアメリカが主導する有志連合の対ISIS軍事作戦に参加することはない、と安倍首相は強調した。首相はまた、シリアを含めた中東における人道支援を今後も継続していくと述べた。しかし、安倍首相はISISの要求を受け入れる姿勢を全く示すことはなかった。

世界の多くの国々と同様に、日本も要求された身代金の支払いを拒否した。しかし、この日本の対応をISISの人質となった自国民を見殺しにしたものと考えるべきではないだろう。問題はそれほど単純なものではない。

それ程巨額の身代金を自国民を殺害したことが明らかな過激派グループに対して支払うことなど果たしてあり得るのか。ISISが後藤健二氏を釈放するなど誰が保証し得るのか。それ程巨額の身代金が他の人道に対する犯罪に使用された場合はどうするのか。もしくは、今後ISISが日本国民を標的にしないと一体誰が保証し得るのだろうか。

Kompas, Rabu 28 Januari 2015
Tajuk Rencana: Pilihan Sulit bagi Jepang

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